魂の重さ




 テレビから流れたのはふたご座流星群の話題。どうやら今夜がピークらしい。窓の外に目をやれば、星がひとつ流れていった。流れ星が降るとき人が死ぬと言ったのは誰だったか。煌めく星に引きつけられるようにベランダに出た。冷たい風が体を吹き抜ける。
 またひとつ星が降る。人は死んだら星になる、人が死ぬとき星が降る。そんな迷信を信じているわけではないが、時折星を見ると逝ったやつらのことを思う。公安の同僚、同期、幼馴染み、初恋の人。今流れた星は、誰だ?
「零?」
 星が流れた瞬間に、ベランダの窓が開く。風呂から上がったが首を傾げてそこにいる。
「何してるの……って、ああ今日は流星群だっけ」
 隣に来て空を眺めるの髪からは、柔らかいにおいがする。
「あ、流れた」
「ああ、今日はよく見える」
「でもこんな短いんじゃ無理だよね、三回も願い事言うの」
「信じてるのか? それ」
「別に信じてないけど、願うだけならただだし」
 ということは、何か願おうとしていたのか。
「なんて願うつもりなんだ?」
 俺の問いには一度視線をこちらにやって、また空を見る。
「零が長生きしますようにって」
 本気よ? とは笑う。
「……そんなに死にそうか?」
「仕事が仕事だし、忙しすぎて倒れそうだし、本当に気をつけてよ?」
 は少しち茶化したような口調だが、瞳がほんの少し揺れている。
「……ああ、気をつけるよ」
 死なないとは言えなかった。の言うとおり仕事が仕事だ。そう簡単に死ぬつもりもないが、簡単に約束はできなかった。それはきっともわかっている。
「うん」
 それは何に対する肯定か、は俺の体に寄り添う。
 無駄死にするつもりはさらさらないが、それが自分の使命ならば命を投げ出す。ずっと前に決めた覚悟だ。それでもほんの少しこの命を惜しく思うのは、隣にいるのせいだろう。今まで俺がしてきた悲しい「さよなら」を、に言わせたくはない。
 また星が流れる。今死んだのは、誰だ? 瞼に映るあいつらのうち、誰の星が流れた?
 は流れた星に、願い事を言えたのだろうか。











魂の重さ
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21.05.29

twitter@x_ioroi 伊織ろいさんの「言葉パレット」よりお題をお借りしました。ありがとうございました!