「んん……」
瞼の裏にまで届く眩しい陽光が、容赦なく私の体を覚醒させる。重い瞼をこじ開けて周りを見渡すと、カーテンが少しばかり開いていることに気づいた。
「もう」
ほんの少し開いたカーテンがちょうど私の目元に光を通していたようだ。せっかくの予定のない日曜日だったのに、午前六時なんて早い時間に起こされてしまって怒り心頭だ。ベッドから跳ねるように起き上がってカーテンを閉めて、ふんと息を吐いた。
ゆっくり寝直そう。ため息を吐きながら再びベッドに入ると、ぐっすりと寝入る零の寝顔が目に付いた。
「……よく寝てる」
結婚してから零はよく眠るようになった。ポアロで再会してからは私に眠る姿をほとんど見せなかったのに。結婚前に零が寝入る姿を見たのは確か一度だけのはず。それが今や、今日のように私が隣で動こうが起きる気配すら見せない。
「えい」
ちょっとした悪戯心が働いて、仰向けで眠る零の頬をつんとつついてみた。柔らかな頬に指が沈む。今度は指の背で頬を撫でてみる。少しだけ動いた零の唇に胸の奥が疼く。
零の顔の横に右手をついて、覆い被さる格好になる。ゆっくり体を沈ませて零の唇に近づいていく。あと五センチ、三センチ、一センチ。薄く唇が触れる。少し離して、もう一度。
「好き」
小さく呟いて、三度目のキスをした。その瞬間、零の右手が私の後頭部を掴んでぐいと引き寄せる。今までの薄く触れるキスとは違う、息ができない強いキス。唇がこじ開けられて、零の舌が私の口内を犯していく。
「……はあっ」
息が苦しくなったところでようやく解放されて、思わず後ろに飛び退いた。
「起きてたの!?」
「が起こしたんだろ」
確かに零の言うとおり。頬をつついてみたりと起こすようなことをしていたのだからぐうの音も出ない。
「……ご、ごめん」
「ふあ……今何時だ?」
零は大きくあくびをして、眠気を隠そうともしない。
「六時」
「じゃあまだ寝ててもいいだろ」
零は左手を広げ、「ん」と顎で私を呼び寄せる。
「うん」
引き寄せられるように零の腕の中に体を寄せた。零の腕が私の背中に回って、抱きしめられる格好になる。私の体は零の腕の中に綺麗に収まって、ずっと昔からここは私のためにあったのかと錯覚してしまいそう。
「おやすみ」
零は言葉とともに私の頭を大きな手のひらで抱えて引き寄せる。先ほどとは違う触れるだけの優しいキスは安眠の合図だ。零はすぐに寝息を立て始める。
こんなに油断した表情で寝入る零を見ることなんて、今までずっとなかった。どうかずっと、零にこんな穏やかな日々が続きますように。祈りながら零の腕の中で優しい眠りに落ちていく。
閑話休題02
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18.07.28