「日直さん、これよろしくね」
うちの高校の英語の先生は、日直によく雑用を頼んでくる。主にCDとか教科書とかの荷物運びだ。はっきり言って面倒この上ない仕事だけれど、友だちには「白馬くんと一緒にやれるんだからいいじゃない!」と言われてしまった。そう、今日の日直は私と白馬。そりゃ、私だって白馬と一緒に日直やれるなんてまあ、その、何、嬉しい、っていうか、嬉しいんだけど、緊張してしまうというか。友だちにも言ってない私のこの白馬への恋心。なんで言えないって、みんなが「白馬くんかっこいい!」とか騒いでるときに散々「あんな優男興味ない」だの「ああいうキザな奴ってムカつく」とか言ってしまったからだ。そんな私が一転白馬と会うたび話すたびドキドキしてるなんて天地がひっくり返ったって言えない。そんなのは私のプライドというか、何というか、そういうものが許さない。
「さん」
「は、はいっ?」
そんなことをぶつぶつ考えてると英語の先生の荷物を持った白馬が私に話しかけてきた。やばい、びっくりして変な声出してしまった。
「何か具合が悪いようですね。これは僕一人で運ぶから休んでいたほうがいいですよ」
「あ、いや、大丈夫だから!一緒に行くよ!」
「でも…」
「本当大丈夫!半分持つね!」
ああああ何を慌ててるんだろう私。言葉遣いとかいろいろ普段の私じゃありえないことになってる。多分白馬の言った「具合が悪い」というのは私の顔が赤いから言ったのだろう。友だちの間ではさっぱりさばさばした姉御肌で通ってる私が好きな人の前ではこんな緊張してしまうなんて。白馬のことを好きだと思う反面こういうときは憎たらしくも思える。私をこんな気持ちにさせやがって、と。白馬は何もしてないけれど。
「持って行く教室はどこでしたっけ?」
「確か、2年生の…」
何組か、確かめるために先生の教科書に貼ってある先生専用時間割を見る。げ、一番遠いクラスだ。それを白馬に告げると、少しだけ早足でその教室へ向かった。
「休み時間、あと何分?」
「…あと2分13秒ですね」
「わ、急がなきゃ」
荷物運びを終えると、休み時間はもう残り少なくなってしまっていた。だから英語のある日の日直は嫌なんだ。はあ、と溜め息をつきながら白馬と並んで教室へ向かう。次の授業は、えーと、6時間目だから数学だっけ…?
「>さん、本当に具合悪くないのかい?」
「大丈夫だって」
「そう、よかった」
「えと、心配してくれて、ありがとう」
多分、うんうん考えていたから、そう聞いてきたんだろう。さすが探偵というか、観察力とかそういうのすごいなぁと思う。きっと誰の前でもしっかりしてるんだろう。かたや私は、ありがとうの一つ言うだけで心臓が破裂しそうな思いをしてる。暗いところも狭いところも高いところも大丈夫で心臓に毛でも生えてるんじゃないのと言われた私も白馬の前じゃ形無しだ。やば、顔赤いかもしれない。
「ちょっと失礼」
また懲りずにうんうん考えていると、白馬はそう言って私の額に手を当てた。 額に 手、を
「わ、な、なに!?」
「やはり熱があるようですね。強がるのもいいですが、やり過ぎは感心しませんよ」
「だだだ大丈夫だって!あの、だから、」
「だから?」
「…手、どけてくれませんか…」
そう言ったら白馬はくす、と微笑んで手をどけた。顔はもう赤いなんてもんじゃない。きっとユデダコだユデダコ。
「では、保健室に行きましょうか」
「いや、その、一人で行けるから大丈夫!」
「強がりは感心しないと言ったでしょう。具合の悪い女性を一人で歩かせたりはしませんよ」
そうそうそれと、と白馬は付け加えるように私の耳元で囁いた。
「いつもの凛とした態度もいいですが、今日のように慌てるあなたも可愛いですね」
奇妙に長く感じる瞬間
07.09.16
title/tv様より