気がつけば流星群

12月24日、午後6時、一人自分の部屋の中で、本気で後悔した。何で私はあんなくだらないことで白馬とケンカしたんだろう。ケンカって言っても、私が一方的に怒ってるだけなんだけど。いつもなら、私が何でもないような顔して白馬のところに行けば、あいつは微笑んで迎えてくれる。だからとっとと白馬のところに行くなり電話するなりすればいいんだけど、今回は、そんなのはいやだ。意地張ってる場合じゃないってわかってるけど、だけど、今、笑って会いに行けというのは、私には無理だ。バカじゃないのと言われるかもしれないけど、そう言う人は出来る人、私は私、バカな意地が邪魔をする。

台所からケーキのいい匂いがする。そういえばお姉ちゃんが焼いてるんだっけ。お姉ちゃんのケーキ美味しいんだよなあ。「クリスマス出掛けるから!」と一ヶ月前からうきうき顔で言ってた自分を恨む。そんなこと言っといて家族でクリスマスを過ごしたらありえないくらい可哀相な子になってしまう。おかげで一旦出掛けるふりをして、窓からこっそり自分の部屋に入って電気もつけずに部屋にいるはめになってる。

ケンカの原因は、そのクリスマスなんだ。恋人同士でクリスマスを過ごすなんて日本だけっていうのは知ってたけど、私は生粋の日本人で日本に生まれて日本で育ったんだから、クリスマスはそりゃ、白馬と一緒にいれたらなあ、と思ってた。白馬と、そういうイベントを過ごすのは初めてだし、うきうきしてたわけだ。そのうきうきを裏切るかのように白馬は一向にクリスマスの件について何も触れてこない上に終いには「イギリスでは、クリスマスは家族と過ごすのが一般的だけどね」と言った。私はそれを直接白馬に聞いたわけではなく、他の人に言ってるのを聞いただけだけど。それでも私の気分を落とすには十分だったわけだ。クリスマス近くになっても白馬が全くクリスマスについて触れないことに不安を覚えていたこともあり、思わず鞄を投げつけてしまった。当たらなかったけど。それが3日前のこと。

今考えてみればその言葉には続きがあったかもしれない。ちゃんと聞きもせずに鞄を投げつけた3日前の自分を制しに行きたい。いや、止めたところでクリスマスの誘いがなかった時点でちょっと、まあ、あれだけど、せめてあと10秒、いや5秒待てばよかった。

うんうん唸りながらそんなことを考えていると、携帯が派手に音を鳴らして着信を知らせる。画面には「白馬探」の文字。3日前に鞄を投げつけてから電話もメールも無視し続けたけど、やっぱり、ここは、出るべきなんだろうか。意地張ってばっかじゃ、いけないよ、ね。

「もし、もし」
「久しぶりだね」

久しぶりって、3日前に会ったけどね。白馬となんて1週間会えないことだってざらにあるから3日前じゃ別に久しぶりというわけじゃない。久しぶり、に込められて皮肉が痛いほどわかる。

「…、確かにイギリスではクリスマスは家族で過ごすのが一般的だ。だけど、僕は今日本にいる」
「…?」
「クリスマスは、がしたいようにするつもりだよ」

久しぶり、と言ったときよりずっと、言葉に優しい響きがするのは気のせいかな。じわ、と涙が滲んできた。何で泣いてるんだろう。別に悲しいわけでも嬉しいわけでもないのに。

「…クリスマスくらい、白馬と一緒にいたいんだけど」
「やっと言ってくれたね」
「…わかってたんじゃん」
「クリスマスくらい、>の素直な言葉を聞きたかったんだよ」

意地っ張りな>も好きだけどね。白馬は笑いながらそう言った。
急いで外に出れば、空はもう星が煌く。早く、会いに行かなくちゃ。


















07.12.24


title/tv様より