「もうすぐハロウィンだね」
探は自分の手帳を見ながらそう言った。
イギリスに長いこといた探にとって、ハロウィンはやっぱり馴染み深いものなんだろうか。
「私あんまりハロウィンって好きじゃない」
「おや、どうしてだい?」
「うーん…日本でハロウィンが流行りだしたのって最近じゃない?
なんていうか、好きじゃないっていうより馴染めない感じなんだよね」
多分、クリスマスみたいに生まれたときからあったら嫌悪感もなかっただろう。
このまま、ハロウィンが流行ったままあと10年くらい経てば、私も普通に楽しんでるんだろうけど。
「でも去年はみんなが配ったお菓子を抱えて幸せそうだったって聞いたけど?」
「ちょ!それ誰から聞いたの!?」
「さあ?」
しれっとした顔でティーカップを口に運ぶ探。
こいつの情報量は本当に半端ないというかなんというか、本当にどこから仕入れて来るんだか。
私が小学校の頃の話とか、私自身忘れてるようなことまで知っているから困るんだ。
「今年も頼めばみんなくれると思うよ?」
「それ頼むときトリックオアトリートって言うじゃない。
”お菓子くれなきゃ悪戯するぞ”って意味でしょ?」
「そうだね」
「…何だかいやらしく聞こえるんだけど」
探は目を丸くして、ていうか真ん丸にして、こちらを見てる。
そりゃ、我ながら変なこと言ったとは思うけど、これは前から思ってたことで、
それに、「悪戯するぞ」とかって、絶対みんないやらしいと思ってると思うんだけど。
「こういう話を知ってるかい?」
「え?」
「ある感情が強すぎると、その思いにつられて普通の状態とは違う思考が脳を巡るらしい」
「あの、私の話はスルーですか」
深く突っ込まれるのも恥ずかしいけど完全無視のほうが居心地が悪い。
どうせなら笑って流してくれたら…と思ったけどそんな探は想像つかないし、
でもやっぱり完全無視は……
「、人の話を最後まで聞かないのは君の悪い癖だよ。まだ続きがあるんだから。
例えば、幽霊を怖いと強く思ってる人は幽霊を見た気になってしまう。
恋をしたいと思ってる人は、友情と恋愛感情を勘違いしてしまう」
「…へえ。それで?」
「つまり、いやらしいことをしたい人は、なんでもない言葉をいやらしいと感じてしまうわけだ」
探は笑顔で私のほうを向いた。
笑顔っていっても、なんていうの、別に可愛いとかそういう笑顔じゃなくて、企んでる感じの。
「つまり、はいやらしいことをしたいんだね?」
「はああ!?」
「大丈夫、僕は女の子がそういう気持ちになることを悪いことだと思ってないから」
「思ってないから!違うから!ていうか寄ってくるなああああ!!!」
ハロウィンなんてなくなればいい。
トリックオアトリート!
07.10.30
すみませんでした。