「あ、」
「>」
一年振りにあった彼は、あの頃とほとんど変わらずにいた。
「何やってるの、こんなところで」
「こそ」
「…休みだからこっちに遊びに来たの。あんたこそいつも車なのに」
「今日は歩きたい気分でね」
白馬にも歩きたい気分なときあるんだ。あれ、なんだ一年間一緒にいたわりに私白馬のこと何にも知らないんだなぁと思った。私と白馬は、白馬が転校してきてからの一年間まあまあ仲良くしてた。まあ、まあまあと言っても白馬と仲良くできる人なんてかなり稀少だったけど。一年一緒にいて、私は少し遠目の大学に行くために引っ越して、それから一年。会おうと思えばいつでも会えたわけだけど、さっきも言ったとおり「まあまあ」に仲がよかっただけで、連絡を取って会おうとまでは思えなかった。だから一年振り。会うのも、もちろんこうやって話すのも。
「大学は楽しいかい?」
「まあまあ、ね」
「はよくまあまあ、を使うね」
「え?」
「変わってないな」
まあまあ。確かによく使ってたかもしれない。だって便利なんだ、まあまあ、って。白馬くんと仲いいの?と聞かれたときもいつもまあまあ、と答えてたような気がする。別に特別仲がいいわけでもないけれど、悪くない。まあまあって言葉が一番ピンと来るんだ。
「白馬も変わってないね」
「そう?」
「その鼻に付く感じ。白馬と話してるんだなーって気になる」
「…それは喜んでいいのかい?」
「褒め言葉よ。嫌味ったらしくない白馬なんて白馬じゃない」
それは本当だった。あの嫌味にイライラすることだってあったけど今はそれですら懐かしい。あの頃に戻れたらなぁ、と思うこともある。
別に今が楽しくないわけじゃない。寧ろ楽しい。学校に友だちもいるし、毎日充実してる。でも、やっぱり足りないんだよ。
「白馬がいないとさぁ、何か物足りないんだよね」
「…どういう意味だい?」
「白馬といるときの、イライラするっていうか、なんかそういう感じのこと」
「…それも喜んでいいのかな?」
「寂しいって言ってるんだから喜んでよ」
寂しい。自分で言ってて何だか違和感を感じた。寂しいというより、何かぽっかり心に穴が開いたというほうが正しい。それともそういう感情を広く寂しいというのだろうか。
「…私、そろそろ行くけど」
「そう…」
「じゃあね」
「」
その場を離れようとしたとき、白馬は私のことを抱きしめた。
とても不思議な感じだった。私は別に白馬のことを好きだったわけではないし、白馬も私のことを好きではなかっただろう。なのに、白馬の腕の中にいるのは嫌じゃない。それどころか、とても心地いいような気がする。これが好き、なのかな。でも何となく違う気がする。
「はく、ば」
「……」
「あの、」
「じゃあ、さようなら」
白馬は私を離すと、そう言って歩き出した。待って、まだ、言いたいことが
「今度いつ会える?」
思わず出たのはそんな言葉だった。また、会えなくなる。それがどうしようもなく嫌だった。
「…姫が御所望とあらばいつ何時でも」
「…約束よ」
その約束だけして私たちはその場を立ち去った。さよならじゃない、そう言い聞かせて。
「また、会おうね」
HELLO
07.09.08