「うーん……」
街のショップを周ってうんうん唸り続けて早2時間。
自分のための買い物ならこんなにも悩まないけど、誰かへのプレゼントとなるとそうも行かない。
同性の友人ならまだしも、付き合って2ヶ月の恋人となればなおさらだ。
「白馬の欲しいものってなんだろう…」
自慢じゃないけど、男性にプレゼントをしたことなんて父親相手くらいにしかない。
白馬はきっと私があげるものなら何でも喜んでくれるだろう。私だって白馬がくれるものなら何だって嬉しい。
肝心なのは物ではなく祝いたいという気持ちなのだとわかってる。
それでもやっぱりせっかくだからより喜んでくれるものをあげたいと思う。
何が欲しいか、なんてさすがに本人に聞けるはずもなく、参考までにとクラスメイトの黒羽に「何をあげればいいと思う?」と聞いてみたら、
「自分がプレゼントでいいんじゃねーの?」と言われてしまった。その後殴り飛ばしてやったけど。
「もういっそケーキでも焼こうかな…。…お菓子なんて作ったことないけど」
「大丈夫、が作ったお菓子ならきっと何でもおいしいよ」
「えー…でも前に調理実習でマフィン爆発させたことが…」
そこまで言いかけて今の状況がおかしいことに気づく。
私は1人で買い物に来ているはずであり、会話する相手なんていない。
というかこの場合問題なのはこの声の主であり私がまさか彼の声を聞き間違えるはずもなくなんていうかとりあえずちょっと待って。
「は…白馬?」
「やあ、偶然だね」
「う、うん、偶然だね!」
案の定、振り返るとそこには白馬がいた。
私は今汗だくになっている。当たり前だけど暑いからじゃない。
白馬の誕生日まであと3日という日時、男性物を扱うショップの前という場所、「ケーキ」という単語。
ここまでくれば白馬じゃなくても気づくだろう。私が白馬の誕生日プレゼントを選んでいると言うことを。
「ケーキもおいしそうだけど、それより欲しいものがあるんだ」
固まっている私のとなりで、白馬は涼しそうににこにこしている。
あれおかしいな今日はかなり暑いはずなんだけど。
「…欲しいもの?」
「正確にはものじゃないんだけど」
「…ま、まさかそのちょっとあれな方向の話?」
「あれな方向?」
「いや、違うならいい。気にしないでください」
「ものじゃない」ということで例の黒羽の発言を思い出してしまったけどどうやら違うようだ。
それなら安心…。……安心なのか?
「で、欲しいものって?」
誕生日当日に驚かせたいという気持ちもあって今まで聞かないできたけど、もうここまで来たら聞いてしまったほうがよさそうだ。
「そろそろ名前で呼んでほしいな、と思ってるんだ」
「な、名前?」
「そう、名前」
「ものじゃない」というのはこういうことか。
付き合い始めて早2ヶ月。なんでいまだに白馬のことを名字で読んでいるかというと、恥ずかしいという理由に他ならない。
「な、なまえ…」
「そう、名前」
「さ…」
「うん」
「……29日まで練習してくる」
「楽しみにしてるよ」
ハッピー・バースデー
「で、あれな方向って?」
「もういいから忘れてください」
「僕としてはそっちも大歓迎なんだけど」
「!!!」
09.08.29